経営指針物語 1

"第1話 桃太郎"

横木 正幸

 おじいさんが山へ柴刈りに行ったので、お婆さんは川へ洗濯に行きました。もし、おじいさんが山へ柴刈りに行かなかったら、お婆さんは川へ洗濯に行かなかったかも知れない。桃太郎の話は始まらなかった。ここ、「おじいさんが山へ柴刈りに行ったから」という。第一の前提条件がある。
 そしてお婆さんは川で洗濯を始める。その時、上流から桃が流れてきた。お婆さんが、あまりに一生懸命に洗濯に夢中になっていたとしたら、桃はそのまま流れて行ってしまったに違いない。桃太郎の話はここで終わってしまう。しかし、お婆さんは一生懸命洗濯をしていたのにもかかわらず、桃を見逃さなかった。ビッグチャンスを拾い上げたのだ。これが第二の前提条件。
 おじいさんが山から帰ってきた。かたずけていた冷蔵庫?の中から桃を取り出した。もし、桃姫だったらこの物語はどう展開して行くのだろうか。生まれたのが男の子だったという第三の前提条件。すくすく育った桃太郎は、悪い鬼を退治しようと「志」をたてた。
 その桃太郎におじいさんとお婆さんは、かけがえのない「キビダンゴ」を持たせる。道中、犬・猿・キジに出会う。彼らに一番大事なキビダンゴを分け与える。もし、桃太郎一人で全部食べてしまったら、犬・猿・キジといったブレーンはそだったろうか。これが第四の前提条件。
 悪い鬼が住む「鬼が島」を目の前にして、犬・猿・キジが先頭を争って鬼を退治する。桃太郎も頑張る。力を合わせて鬼を退治し、宝の山を手に入れる。ここで、桃太郎いちみが悪い鬼に負けてしまったら、この物語は「悲劇の物語」ということになってしまう。正義は勝つという第五の条件。
 桃太郎の物語が以上のような五つの前提条件から組み立てられているとすれば、私達もいくつかの前提条件を設定することにより、宝の山を手にする方法はないだろうか?
 私達にとって、「宝の山」とは何だろうか。経営者として、経営に携わる者としての「宝の山」とは何だろうか。私達は、過去の勉強会を通して一つの結論を導き出した。それは、「企業の継続・発展」と「社員の豊かで幸せな生活」を「一致させること」であった。
 その大目標を達成させるために、いくつかの前提条件を設定する必要がある。「正しい前提条件」を設定するためには、勉強をしなければならない。本物の経営者にならなければ「宝の山」は手に入らないと気付かせられた。

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