経営指針物語 2

"第2話 空部屋に入る"

横木 正幸

 

 本物の経営者になる為には、何をしなければならないのか。桃太郎の話を借りれば、
、強い「志=理念」を持たなければならない。
、その「志」を実現のものとする為の「方針」を構築する。
、さらに実行する為の「計画」が必要となる。
と言う事になるのではないだろうか。

 この三つの項目の作成が「経営指針の作成」と言う事になる。しかし、「経営指針」と言う言葉は聞いた事は有るが、そんなものは大企業のものであって、私たち中小・零細企業の経営者には無縁のものであると考えていたのではないだろうか。
 話は変わるが、政府や行政は「零細企業」と言う言葉を使わない。何故か?聞くところによると、それは労働組合からの要求であると言う。労働者のプライドを傷つけるものだと申し入れがあったのだという。
 中小企業にも2種類ある。その一つは、大企業傘下における中小企業である。もう一つは、地場に密着して育ってきた中小企業である。どちらの要求であるかは分からないが、そういう経緯があるらしい。だから政府の統計書を見ると、私たちの規模とはかけ離れた数字が載っている。理解の仕様のない無縁の数字が並んでいる。
 しかし、現実はどうか。零細である事に「誇り」を持っている経営者が大勢いるのではないだろうか。ベンチャーと称している者もいる。何よりも事故責任において経営をしてきたと言う実績と、自信のある経営者が大勢いるのではないだろうか。
 だが、科学的な経営であったかと問われると、そうであるとは言い切れない。ガムシャラな経営者魂と、膨大な社員の汗によって支えられた実績ではなかったろうか。会社の業績が良い時には、全て社長の手柄であり、業績が落ちた時には、部下のせいにしてはいなかったろうか。
 経営の基本は「科学的経営」と「人間尊重の経営」に徹する事だと言う。
 では、「科学的経営」とは何だ?「人間尊重の経営」とは何だ?経営者の心の底にある好奇心が目を覚ます。生業・家業として、闇雲に働いているだけに「経営」という言葉に新鮮な好奇心が沸く。経営という仕事をすることが経営者の仕事だと言う事に気付く。よし!勉強してみようか!立派な経営者になるぞ。と、正しい動機づけが出来た。経営指針という今まで覗いたことのない部屋に入る動機付けは出来た。
 勇気を持って飛び込んだ部屋は、お化けも女神もいなかった。何だ?これは・・・・そこには迷路の世界が広がっていた。一歩踏み込んだ迷路の部屋はどっちへ行っても壁にぶつかる。しかし、出口のない迷路はない筈だ、と思ってまた入り口に戻ってしまう。

 何だ?これは・・・

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