経営指針物語 4

"第4話 マズローの五段階"

横木 正幸

 

 しかし、お客様とは、いったい何者だろうか。三波春夫は「お客様は神様です」と言った。本当はそうなのだろうか?お客様が神様なら、値切ったり、クレームをつけたり、他から買ったり、と言う事をなぜするのだろうか?考えた!そうだ、お客様は神様ではない。
 お客様は浮気者なんだろうと気がついた。
 その浮気なお客様に浮気をさせないように盆・春の挨拶に走り、営業マンを走らせているのではないだろうか。
 基本的に、浮気なお客様のお役に立つこと、喜んでもらおうということなのだから、これはたいていのことではないぞ、と感じたしだいである。
 二番目の第一は、「社員第一主義」に徹するということだという。これを「人間性」と言うのだそうだ。これもまた理解に苦しむ。何で社員第一主義なんだ。なんと言っても「我が身第一主義」ではないか?売上を上げるために、利益を出すために社員を採用し、働いてもらっている筈だ。その労働に対して給料を払っている筈だ。社員は売上を上げるためにある。利益をあげるためにある。と、誰もがそう考えていたのではないだろうか。しかし、この考えも見事に吹っ飛んでしまうことになる。
 もし、社員がいなければここまでの業績と信用を得る事が出来ただろうか。多分に社員の力で会社を継続・発展させてきたのではないか。とすれば、社員とは何だ。そうだ!社員は経営者の良きパートナーなんだ。お互いに力を合わせ、ベクトルをあわせる事によって、現状を築き上げてきた良きパートナーなんだと気づく。
 社員にもそれぞれの家庭があり、家族がいる。社員の生活を少しでも良くしてやりたいという「思いやりの心」が沸いてくる。相手の立場にたって物事を考えられるというのは、人間だけに与えられた能力である。うちの犬が隣の犬に思いやりをかけたという話は聞いた事がない。人間だけに与えられたすばらしい能力であることに気づく。どうしたら、社員とその家族が豊かで幸せな生活が出来るだろうか。
 そこで出会ったのが、マズローの五段階思考であった。これを一段階づつクリアーしていけいいのだ。最初の一段階目は、給料・休日の欲求を満たすことだという。給料は多いほどいい。当り前のことだ。しかし、それが経営者にとっては、一番難しい問題だ。
 マズローの五段階というのは、最初の一段階をクリアーしないと次の段階へ行けないのだという。何としても、この一段階をクリアーしなければならない。給料・休日というのは、会社の一番の問題だ。さあ、どう解決すればいいのだ。全く出口の見当たらない迷路に迷い込んでしまった。
 頭の中は、赤と黄色のランプが激しく点滅している。まさにキケル寸前であるこういう事を考えている事が社員第一主義に徹していることなのか。これが人間尊重の経営なのか、と分かってくる。
 どうもこの勉強会は、今までの勉強会と違うぞ。適当な思考では袋小路で窒息するぞ。本気にならないと永久に迷路の世界に閉じ込められてしまうぞ。好奇心から入ってみた空部屋は、大集中をしないと抜け出せない部屋だと気がついた。

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