経営指針物語 11

"第11話 110番ネットワーク"

横木 正幸

 

 しかし、ソフトな部分だけでは限界がある。何とかハードな部分で付加価値をつけることは出来ないか?誰でもすぐ分かる差別化をつける方法はないか?
 そこで考えついたのが、「時間」という付加価値をつけることによる「差別化」であった。一週間かかるものを三日で納品することは出来ないか。三日かるものを一日で納品できないか。
 我が社の場合では、名刺の印刷は今まで一週間の時間を頂いていた。しかし、今日の会議に必要な人もいるはずだ。それに間に合わせれば必ずお客様に喜んでいただけるはずだ。
 これは、製造だけではない。サービスにも適用できる。例えば、夜中に水道管が破裂した。放って置いたのでは一晩中眠れない。少しくらいお金がかかってもいい。誰かがすぐ直してくれないかと思う。そんな時、すぐに手当てをしてくれる会社があったなら、お客様はきっと感謝をしてくれるはずだ。
 「お客様の『緊急・特段』のご要望」にお答えすることだ。大企業では出来ない中小・零細企業の分野の仕事だ。そんな発想で誕生したのが「名刺110番=コーエイ印刷」であり、「漏水110番=政重工業」だった。
 実際、卓上の理論を実行に移すことは難しい。しかし、これは成功だった。まさに「お客様第一主義に徹する」という社会性に沿ったものだった。経営の原理・原則といわれることを確認をした。
 経営指針作成の中で「付加価値をつける」「差別化を行う」と、全員が書くのだが、具体的な内容はあまり書かれていない。指針作成の中の一番弱いところでもあるのかもしれない。理論的には理解できるが、実際の行動が伴わない計画が出来あがる。だから「絵に描いた餅」になってしまうのだ。
 そこで、まず自社の「一番の売り物」を探し出してみることにした。自社のNo.1′only1を探し出してみる。これもなかなか見つけ出せないのが現実だ。そうすると、結局は人と同じことをやっていただけという結論が出る。それでは儲からなくて当たり前だ思考不足=勉強不足の自分と向かい合うことになった。
 今のところ、無理矢理No.1′only1を見つけ出した会社は二十三社。そこでお客様の「緊急・特段」のご要望にお答えする「新潟100番ネットワーク」を二十三社で結成したのが平成10年の5月。まだ組織は小さいが、今までにない「異業種交流」であることには間違いない。一事業体一社を前提に仲間を広げている。近いうちに「110番加盟企業」というのが大きなステータスシンボルになることを期待している。またお客様が必ず支持をしてくれるだろうと信じている。
 構造不況の中で、自社を変えなければついて行けない時流である。「110番システム」を支えるには、それなりの努力が必要になる。まず、お客様のご要望に応えられるだけの組織作りが必要になる。それには何としても「人育て」が必要だ。「人を育てること」が、経営者の大きな仕事のひとつであることを確認した。



続く



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